ザイゴマインプラント と通常のインプラントの 違い

ザイゴマインプラント と通常のインプラントの 違い

監修:オールオン4 ザイゴマクリニック

院長 歯学博士 大多和 徳人

ザイゴマインプラント 。聞き慣れない名称ですよね?インプラントということはなんとなくわかるけど。通常のデンタルインプラントと 違い はどこにあるのでしょうか。

そもそも通常のインプラント ( = ノーマルインプラント)や ザイゴマインプラント はどのような形状なのでしょうか。また、その使用部位や治療期間に違いはあるのでしょうか。

この記事ではザイゴマインプラントとノーマルインプラントの違いを形状や使用部位、治療期間などできるだけ詳しく紹介してみたいと思います。

ノーマルインプラントの形状

通常インプラントの形状
図1:直径は3〜6mm 長径は8〜20mmと種類が多い

図1を見てみましょう。人に生えている歯の根っこは「歯根」といいますが、インプラントの場合、「人工歯根」と呼ばれます。つまり、新たに作られる人工的な歯の根っこの部分に相当します。よく使われるインプラント体のサイズは、インプラントの直径が約 4mm、長径が約10mmのものになります(メーカーにより前後あり)。太ければ太いほど、長ければ長いほど、インプラントの骨に対する強度は向上します。その形状はシリンダー(円柱)タイプとコニカル(円錐)タイプとわかれます。

通常インプラントの使用部位

通常インプラント
図2:上顎骨に埋入された通常インプラント(シリンダータイプ)

図2に示すように、通常のインプラントは歯槽骨(Alveolar Bone)に使用されます。歯槽骨は上顎骨や下顎骨の歯が生えていた部位の骨のことです。歯槽骨は、表面は硬い皮質骨で覆われ、中は柔らかい海面骨で満たされています。通常インプラントの使用部位は上顎骨の歯槽骨と下顎骨の歯槽骨となります。

通常インプラントの治療期間

通常インプラント 治療期間
図3:通常インプラントは化学的結合の完成を待つ

ノーマルインプラントの化学的結合が完成するのは3〜6ヶ月ほどかかります。その施術方法が即時荷重なのか遅延荷重なのかでインプラントを使用し始める時期は変わります。これは患者さんの骨の状態(柔らかい骨か硬い骨か)や欠損歯周囲の状態(病巣がある部位なのか周囲の歯の影響がある部位なのか)による問題と、術者自身の知識や経験によります。一般的に通常インプラントの治療期間は6ヶ月ほどになります。これは1箇所ありの期間なので、数カ所にインプラント埋入を施術した場合、2年以上かかることもあります。

インプラントの術式の違い

インプラントの術式の違い| 即時埋入 | 待機埋入 | 即時荷重 | 待機荷重 より引用

ノーマルインプラントが向いている患者さん

インプラント 骨吸収
図4:通常インプラントは骨吸収があまりないほうがよい

ノーマルインプラントは単数歯欠損から複数歯欠損まで幅広く対応ができます。欠損歯治療の多くは通常インプラントでカバーできます。しかしながら、インプラントを施術するための骨がない場合や神経が近すぎる場合など患者さんの環境的要因も考慮しなければなりません。1歯欠損の場合は両サイドの歯を削るブリッジ(健康保険適応治療)で治療できることも多いです。したがって、ノーマルインプラントが向いている患者さんは歯を2、3本失ってしまったが顎骨の吸収があまり進んでいない方になります。

ザイゴマインプラントの形状

ザイゴマインプラント
図5:ザイゴマインプラントの形状

それでは図5はザイゴマインプラントです。一般的なザイゴマインプラントのサイズは直径が 4mm、長径が 45mmのものになります。しかしながら、先端の骨と埋入される部位は約18mmくらいとなります。これはザイゴマインプラントの長さによらず一定です。つまり、インプラントのプラットフォームの位置により全体の長さが変わります。

ザイゴマインプラントの使用部位

ザイゴマインプラント
図6:ザイゴマ(頰骨)は上顎骨の隣になる

ザイゴマインプラントは頬骨(Zygomatic Bone)に使用されます。頰骨は上顎骨のすぐ横の骨です。上顎骨と繋がっている骨です。この頰骨の端の一部を使用します。骨密度が高く、インプラントに向いている骨です。ザイゴマインプラントの使用部位は、起始部が上顎骨歯槽骨、停止部が頰骨となります。

ザイゴマインプラントの治療期間

zygoma implant
図7:ザイゴマインプラントは当日から使用(物理的結合)

ザイゴマインプラントは普通、即時荷重インプラントになります。これは、非常に強い物理的結合をインプラントと顔面骨に発生させることによります。しかしながら、患者さんの骨の状態や手術の内容によってはすぐにザイゴマインプラントを使用せずに骨との化学的結合を待つ歯科医師もいるかもしれません。一般的な1本のザイゴマインプラントの使用開始は1日、治療期間は3ヶ月ほどになります。

ザイゴマインプラントが向いている患者さん

骨吸収が進んだ時のインプラント
図8:ザイゴマインプラントは骨吸収が進んだ上顎骨で用いられる

ザイゴマインプラントは複数歯欠損にしか対応できないインプラントです。通常のインプラントとの大きな違いは、1本だけで使用することはないことです。単数歯欠損や4、5本欠損程度では全く向いていないインプラントです。しかも、ザイゴマがある上顎(うわあご)専用のインプラントです。インプラントをするための上顎骨が全くない方や骨が薄すぎる方が対象となります。ザイゴマインプラントが向いている患者さんはかなり多くの歯を失っており、顎の骨の大部分が吸収してしまった方となります。

まとめ

ノーマル
インプラント
ザイゴマ
インプラント
主な形状4mm × 10mm4mm × 45mm
使用部位上顎骨歯槽骨
下顎骨歯槽骨
頰骨 (上顎骨の隣)
下顎は使用不可
治療期間3〜6ヶ月1DAY〜3ヶ月
対象患者少数歯欠損
骨吸収少なめ
多数歯欠損
骨吸収多め
治療の
拡張性
単冠
ブリッジ
入れ歯
ブリッジ

ノーマルインプラントとザイゴマインプラントはコンセプト自体が全く異なります。ノーマルインプラントは基本的に1つの歯や2、3本の歯の欠損を補うようなコンセプトです。したがって、治療の拡張性としては「単冠」「ブリッジ」となります。パーツを組み替えることで「入れ歯」まで広げることは可能です。それに対し、ザイゴマインプラントは1本で3、4本の歯の欠損を補うようなコンセプトになります。したがって、拡張性としては「ブリッジ」となります。(パーツを組み替えれば「入れ歯」も作れないことはないですが…)

いかがでしたが?通常のインプラントとザイゴマインプラントの違い、なんとなく理解できたでしょうか?どちらがよいとか、どちらが優れているなどはなくコンセプトが全く違うのです!患者さんにとってより最適な治療をご提案するのが歯科医師の仕事です。ちなみにインプラント 上の入れ歯、インプラントオーバーデンチャーと All-on-4 ( オールオンフォー )の違いを下記リンクに記しています。よかったら参照してみてください。

オーバーデンチャー と オールオンフォー の 違い

オーバーデンチャー と オールオンフォー の 違い より引用

最後までお読みいただきありがとうございました。今回は「ザイゴマインプラント と通常のインプラントの 違い」をテーマに記事を書きました。歯の深刻な悩みをお持ちの方に向けて記事を書いていますが、疑問は解決しましたでしょうか? 皆様のインプラントに関する不安を少しでも軽減できる情報を提供できればと考えています。

本ブログは「双方向」であることをモットーとしています。本ブログ読者からのインプラント、All-on-4、ザイゴマインプラントに関するフィードバックやご質問に、できる限り筆者が記事を書いたり、個別返答でお悩みにお答えすることができます。
※本ブログはインプラント・ザイゴマインプラント専門のブログとなりますのでご了承ください。

著者紹介

大多和 徳人

おおたわ歯科医院

オールオン4 ザイゴマクリニック

院長 歯学博士
専門分野

重度歯周病 / ザイゴマインプラント

学歴・職歴

  • 九州大学歯学部歯学科卒業
  • 九州大学大学院顔面口腔外科卒
  • 九州大学病院デンタルマキシロフェイシャルセンター勤務
  • 大分岡病院顎顔面外科マキシロフェイシャルユニット勤務
  • All-on-4 ザイゴマクリニック開設

所属学会

  • 日本口腔外科学会所属 認定医
  • 顎顔面インプラント学会所属
  • ICOI(国際インプラント学会)所属 認定医
  • All-on-4 ザイゴマインプラント協会 理事
  • Study Group of the Edentulous Solutions 理事

専門

  • All-on-4 ザイゴマインプラント専門医
  • 九州大学総長賞受賞
    (テーマ: 3Dプリンターによる三次元骨再生)
  • 博士号取得
    (テーマ: カスタムメードチタンメッシュでの骨再生)
  • 国際特許取得
    (主題: All-on-4 のための三次元スキャンボディの開発)

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