ザイゴマインプラント は本当に有用なのか?- 論文による客観的評価

ザイゴマインプラント は本当に有用なのか?- 論文による客観的評価

監修:オールオン4 ザイゴマクリニック

院長 歯学博士 大多和 徳人

ザイゴマインプラント とは

ザイゴマインプラント
図1:ザイゴマインプラント

ザイゴマインプラント は、頬骨に埋入する非常に難易度の高いインプラント手術です。
しかし、日本ではまだ情報や論文、データが少なく、ネットなどで調べても、客観的にその有用性を伝えることが難しいのが現状です。

さらに、実際にザイゴマインプラントの埋入手術を積極的に行っている歯科医院も多くはありません。

そこで今回は、日本国内にとどまらず、海外の権威あるジャーナルに目を向け、最新の論文をもとに、ザイゴマインプラントが本当に有用な手技であるのか、どのような点で有効なのかを客観的にご紹介します。

この記事を通じて、ザイゴマインプラントの専門性の高さと、その重要性についてご理解いただければ幸いです。
手術をご検討されている方は、ぜひ最後までご一読ください。


【論文紹介①】ザイゴマインプラント術後10年間の骨吸収評価

Journal of Clinical Medicine
図2:Journal of Clinical Medicine

Journal of Clinical Medicine(2025年2月掲載)

本論文は、スイス・バーゼルに本拠を構えるMDPIが発行する国際的な査読付き医学雑誌『Journal of Clinical Medicine』に掲載されたものです。インパクトファクターは3.0超で、信頼性の高い論文であるといえます。

研究概要:

本研究は、ザイゴマインプラント埋入から10年後の頬骨の骨吸収について後ろ向きに評価したものです。

CTおよび専用ソフトを用いて、50名の被験者の術直後・1年後・10年後の三次元画像を比較し、骨吸収および骨密度の変化を分析しました。

結果:

  • 骨吸収は10年間で有意な減少は見られず
  • 骨密度は術後1年および10年後で有意に上昇
  • 1年後と10年後の間には有意差なし

結論:

ザイゴマインプラントを用いたリハビリテーションは、上顎骨の重度吸収を有する患者に対し、即時の機能回復を可能にし、長期的にも高い成功率を誇る予測性の高い治療法であるとされています。


【論文紹介②】片側性ザイゴマインプラントの有用性

片側性ザイゴマインプラント
図3: British Association of Oral Surgeons

British Association of Oral Surgeons(2023年11月掲載)

本論文は、イギリスの口腔外科学会誌に掲載された、スペインの研究者による片側性ザイゴマインプラントに関する症例報告です。

研究概要:

上顎骨が萎縮した無歯顎の患者に対し、片側性(右または左)のザイゴマインプラントを用いた補綴治療を実施。全症例に「ZAGA(Zygomatic Anatomy-Guided Approach)」を適用しました。

結果:

  • 計6本の片側性ザイゴマインプラントを埋入
  • 平均フォローアップ期間:4.1年(最大144ヶ月)
  • インプラントの脱落例なし
  • 補綴装置の破損やスクリューの緩みもなし
  • 合併症は軽微、患者満足度は高評価

結論:

片側性ザイゴマインプラントは、治療期間や侵襲を抑えつつ高い成功率を実現できる有望な治療法です。特に後方部の著しい骨吸収例において有効と考えられます。

なお、当院では審美性や安定性を重視し、片側よりも両側性ザイゴマインプラントを選択することが多いですが、片側性が無効であるという意味ではありません。


【論文紹介③】頭頚部癌患者におけるザイゴマインプラントの応用

頭頸部癌術後のザイゴマインプラント
図4:Oral &Maxillofacial Surgery

Oral & Maxillofacial Surgery(2024年7月掲載)

ヨーロッパ口腔顎顔面外科学会の公式ジャーナルに掲載された本研究では、上顎腫瘍切除後の再建にザイゴマインプラントとオブチュレーター義歯を併用したケースが紹介されています。

研究概要:

12名の頭頚部癌患者(合計36本のインプラント)を対象に、術後1〜3年間の追跡を行い、ザイゴマインプラントの生存率および患者の自己評価によるQOLを調査しました。

結果:

  • 非照射群:生存率100%
  • 放射線治療群:生存率85%
  • 嚥下・咀嚼の機能スコアが特に高評価

結論:

ザイゴマインプラントとオブチュレーター義歯の併用は、上顎切除後の機能回復およびQOL向上に貢献します。ただし、放射線治療を受けた患者では骨髄炎のリスクにより、生存率がやや低下する可能性があります。


総括:3本の論文から見えるザイゴマインプラントの可能性

ザイゴマ論文
図5:論文を踏まえて

今回ご紹介した3つの論文から、ザイゴマインプラントは極めて予測性の高い治療法であることが明らかになりました。追跡期間の差こそあれ、いずれも高い生存率と患者満足度を報告しており、今後さらなる発展が期待されます。

当院では、オールオン4との併用による「オールオン4ザイゴマ治療」を積極的に行っており、事故や先天的疾患、腫瘍切除後など、さまざまなケースに柔軟に対応しています。

実際の臨床でも、先天性疾患や舌の腫瘍切除後の患者様に良好な結果をもたらしており、事故による顔面骨折後でもザイゴマインプラントが影響を受けなかった症例もありました。これらは骨密度の上昇による影響かもしれません。

さらに、ザイゴマインプラントの利点として「即時荷重」が挙げられます。通常のインプラントに比べ、短期間で咬合回復が可能なため、患者様のQOL向上にも直結します。


最後に

ザイゴマインプラントには、まだまだ未知の可能性が秘められています。
今後さらなる研究が進むことで、より多くの患者様に希望をもたらす治療法となるでしょう。

当院では、最新の論文や知見に基づいた治療を常にアップデートし、皆様にとって最良の結果をご提供できるよう努めてまいります。

ザイゴマインプラント 頬骨に埋入する、とても難しいインプラント手術です。しかし、ネット等で調べてもまだまだ日本では情報や論文、データが少なく、客観的に有用であるという事をお伝えする事が難しい状況です。

しかも日本では、ザイゴマインプラントの埋入手技を積極的に行うことができる歯科医院は多くありません。

そこで今回は日本ではなく海外に目を向けて客観性を重視してみました。
権威ある世界のジャーナルから直近3年の3つの論文を抜粋して、実際に有用な手技なのか、そして、どういう所が有用なのかという事を論文をもとにお伝えさせて頂きます。

この記事に目を通して頂く事で、ザイゴマインプラントの専門性の高さと重要性を知って頂けると思いますので、ザイゴマインプラントの手術をご検討されている方は是非、ご一読下さい。

最後までお読みいただきありがとうございました。今回は「ザイゴマインプラント は本当に有用なのか?- 論文による客観的評価」をテーマに記事を書きました。歯の深刻な悩みをお持ちの方に向けて記事を書いていますが、疑問は解決しましたでしょうか? 皆様のインプラントに関する不安を少しでも軽減できる情報を提供できればと考えています。

本ブログは「双方向」であることをモットーとしています。本ブログ読者からのインプラント、All-on-4、ザイゴマインプラントに関するフィードバックやご質問に、できる限り筆者が記事を書いたり、個別返答でお悩みにお答えすることができます。
※本ブログはインプラント・ザイゴマインプラント専門のブログとなりますのでご了承ください。

著者紹介

大多和 徳人

おおたわ歯科医院

オールオン4 ザイゴマクリニック

院長 歯学博士
専門分野

重度歯周病 / ザイゴマインプラント

学歴・職歴

  • 九州大学歯学部歯学科卒業
  • 九州大学大学院顔面口腔外科卒
  • 九州大学病院デンタルマキシロフェイシャルセンター勤務
  • 大分岡病院顎顔面外科マキシロフェイシャルユニット勤務
  • ALLON4 ZYGOMA CLINIC開設

所属学会

  • 日本口腔外科学会所属 認定医
  • 顎顔面インプラント学会所属
  • ICOI(国際インプラント学会)所属 認定医
  • All-on-4 ザイゴマインプラント協会 理事
  • Study Group of the Edentulous Solutions 理事
  • ZAGA CENTERS所属 認定専門医

専門

  • オールオンフォーザイゴマインプラント
  • 九州大学総長賞受賞
    (テーマ: 3Dプリンターによる三次元骨再生)
  • 博士号取得
    (テーマ: カスタムメードチタンメッシュでの骨再生)
  • 国際特許取得
    (主題: All-on-4 のための三次元スキャンボディの開発)

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