オールオン4 : 静脈内鎮静法 と全身麻酔の違い

オールオン4 : 静脈内鎮静法 と全身麻酔の違い

監修:オールオン4 ザイゴマクリニック

院長 歯学博士 大多和 徳人

オールオン4 は 静脈内鎮静法 で行う日帰り術 です。しかも、手術時間は上下で3時間程度となります。帰宅時には全ての歯が入って、1日で咬めるようになるような特殊な治療となります。

しかし、患者さんからするとオールオン4の麻酔において静脈内鎮静法がどうして有用かわかりにくいと思います。全身麻酔と比べてどのような点が優れているのでしょうか。

以前、「静脈内鎮静法 とは?オールオン4の麻酔について。」という題名にて、
オールオン4が静脈内鎮静法において有用な理由を、患者さんの視点から記事を書かせて頂きました。

この記事では、術者の視点から、静脈内鎮静法が全身麻酔よりオールオン4やザイゴマインプラントと相性がいいのかという事に関して記していきたいと思います。

静脈内鎮静法は手術開始が早い

全身麻酔と静脈内鎮静法の違い
図1: (上) 静脈内鎮静法 (下) 全身麻酔

静脈内鎮静法の特徴の一つが、すぐに手術を開始できる点です。図1上を見てみましょう。少し広めの部屋に歯科診療台(デンタルユニット)がある程度です。これに点滴台や生体管理モニターがあれば十分です。患者さんは自分で歩いて手術室に入り、デンタルユニットに座ります。問診後、点滴を落としていくとすぐに眠たくなります。リラックスした状態になったのを確認して、手術開始となります。

それに対し、全身麻酔は図1下となります。患者さんはストレッチャーで運ばれてくる場合も多々あるため、大きめな部屋となります。数人のサポートのもと手術室の診察台に運ばれます。麻酔医の問診後、マスクを装着し吸入麻酔薬にて完全に眠ります。その後、鼻か口から肺に向けて大きな管を設置し、特殊な機械で呼吸管理を行います。その後にようやく手術となるため、手術開始まで時間を要します。

静脈内鎮静法は術野が広い

静脈内鎮静法 全身麻酔
図2:(左) 静脈内鎮静法 (右) 全身麻酔

図2は静脈内鎮静法と全身麻酔の写真です。患者さんのほとんどが初めてみる写真なので左右を比べると大きな違いは感じないかもしれません。全身麻酔は静脈内鎮静法と異なり、呼吸管理を患者本人ではなく麻酔医がします。通常、全身麻酔での体や内臓の手術では経口挿管(呼吸の管が口から)が行われますが、歯科や口腔周囲の手術の場合は経鼻挿管(呼吸の管が鼻から)が行われます。

図2右は歯科手術での全身麻酔の写真ですが、鼻から管を挿入しているのがわかるでしょうか。術者からすると、お鼻とはいえこの挿管チューブで術野が見えにくくなるという欠点があります。

図2左は静脈内鎮静法(オールオン4もこちら)の写真です。術野がとても広いがわかるでしょうか。大きな挿管チューブもなく、通常の歯科治療とほぼ同等の術野が確保できます。

全身麻酔は意識が完全にない

全身麻酔は記憶がない
図3:全身麻酔はなにも覚えていない

静脈内鎮静法とは異なり、全身麻酔の場合は完全に意識がなくなります。手術の際に、「意識がないこと」は患者さんにとっては嫌な記憶が残らないため、受け入れられることかもしれません。しかし、術者からすると「意識がない事こと」が場合によっては邪魔になってしまう事があります。

オールオン4 の手術では上下の歯を全て治療していきます。上下顎のオールオン4であれ、上顎だけのオールオン4であれ、対合となる歯との噛み合わせの位置関係が非常に重要となります。患者さんの噛み合わせの位置関係を正確に把握できるのは、自身による「意識下での口の開け閉め」を行う時です。上下の歯の位置関係はある程度までは把握する事はできますが、患者自身の「意識下での口の開け閉め」よりも正確なポジションはありません。

したがって全身麻酔の場合、患者さんの噛み合わせのポジションを不明瞭なものにしてしまい、しっかりとした噛み合わせを作れなくなってしまう可能性があります。

全身麻酔は覚めるまで時間がかかる

全身麻酔 覚醒遅い
図4:全身麻酔はリカバリーに時間がかかる

オールオン4 は手術後に、リカバリールームにて小休憩後に噛み合わせの調整や画像検査を行います。静脈内鎮静法であると、目が覚める(=覚醒)までの時間が短いため、日帰り手術が可能となります。全身麻酔の場合、覚醒するまでの時間が静脈内鎮静法に比べ長くなります。

オールオン4 は歯科治療です。したがって、上下の歯の咬み合わせが重要ですが、しっかり覚醒しない状態では、噛み合わせも正確に表現することが難しくなります。静脈内鎮静法は全身麻酔と比べてふらつきも少なく、上下の噛み合わせも正確に表現でき、治療自体の再現性が高くなります。

全身麻酔は術後に吐き気があることも

図7:全身麻酔は術後に気分不良となることもある

全身麻酔では吸入麻酔薬を使用する事が多く、それによって麻酔の深さをコントロールします。しかし、吸入麻酔薬によっては女性や子供の術後の吐き気のリスクファクターとなってしまいます。ですので、全身麻酔後の吐き気には気を付ける必要があります。ごく稀ではありますが、オールオン4手術で水や血液を誤飲してしまい、吐き気の原因となってしまう事があります。吐き気を催すとそれが何によるものなのかが、分かりづらくなってしまう可能性があるのです。また、静脈内鎮静法と比べ、術後に寒気や頭痛などがおきる場合もあります。

まとめ

静脈内鎮静法全身麻酔
手術開始まで早い時間を要す
手術中の記憶ほぼない完全にない
治療の再現性高いやや劣る
麻酔から覚醒早い時間を要す
頻出術後反応眠気気分不良
術後の入退院日帰り入院

オールオンフォーやザイゴマインプラントは、すべての歯を置き換える治療となります。すると歯がすべて置き換わるので、その日に治療を完結しなければ、術後の患者さんの生活の質(Quality Of Life : QOL)に大きな影響を与えてしまいます。

静脈内鎮静法の場合、手術中に意識が不明瞭であるもののお口の開け閉めができるため、治療自体の再現性がとても高くなります。手術をしながら患者さんの歯のポジションを把握することができるのは、術者にとってはオールオン4の手術自体の難易度を下げることに繋がります。また、日帰りを前提としているので、手術を終えることと歯が全部入ることを一つのゴールとして治療計画を遂行していきます。上記表を見てみましょう。オールオン4 という治療の特性(全部の歯を治療し、かつ噛み合わせも表現する)を考慮すると、オールオン4やザイゴマインプラントは静脈内鎮静法ととても相性がよい治療ということがわかります。

今回は、少し視点を変えたお話となりました。当院ではオールオン4 をよりシンプルに患者さんにご提案できるように静脈内鎮静法による麻酔法をさらに細かく工夫しています。持病や基礎疾患をお持ちの患者さんでも、麻酔薬やその配分やタイミングを工夫することで、オールオン4の治療がスムーズになり、上下でも3時間以内で手術が終わることも可能です。

仕事が忙しいので1日で歯をいれたい、出来るだけ楽に歯をいれたい、
とりあえず 咬めるようになりたい、短期間で綺麗な歯並びになりたい・・等、患者さんには 色々なお悩みがあると思います。当院では皆様のご相談をいつでもお待ちしております。ご連絡は下記へお願いします。

ザイゴマインプラント 電話相談

 

最後までお読みいただきありがとうございました。今回は「オールオン4 : 静脈内鎮静法 と全身麻酔の違い」をテーマに記事を書きました。歯の深刻な悩みをお持ちの方に向けて記事を書いていますが、疑問は解決しましたでしょうか? 皆様のインプラントに関する不安を少しでも軽減できる情報を提供できればと考えています。

本ブログは「双方向」であることをモットーとしています。本ブログ読者からのインプラント、All-on-4、ザイゴマインプラントに関するフィードバックやご質問に、できる限り筆者が記事を書いたり、個別返答でお悩みにお答えすることができます。
※本ブログはインプラント・ザイゴマインプラント専門のブログとなりますのでご了承ください。

著者紹介

大多和 徳人

おおたわ歯科医院

オールオン4 ザイゴマクリニック

院長 歯学博士
専門分野

重度歯周病 / ザイゴマインプラント

学歴・職歴

  • 九州大学歯学部歯学科卒業
  • 九州大学大学院顔面口腔外科卒
  • 九州大学病院デンタルマキシロフェイシャルセンター勤務
  • 大分岡病院顎顔面外科マキシロフェイシャルユニット勤務
  • All-on-4 ザイゴマクリニック開設

所属学会

  • 日本口腔外科学会所属 認定医
  • 顎顔面インプラント学会所属
  • ICOI(国際インプラント学会)所属 認定医
  • All-on-4 ザイゴマインプラント協会 理事
  • Study Group of the Edentulous Solutions 理事

専門

  • All-on-4 ザイゴマインプラント専門医
  • 九州大学総長賞受賞
    (テーマ: 3Dプリンターによる三次元骨再生)
  • 博士号取得
    (テーマ: カスタムメードチタンメッシュでの骨再生)
  • 国際特許取得
    (主題: All-on-4 のための三次元スキャンボディの開発)

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