オールオン4 と 総インプラント (オールオン6など)の 違い

オールオン4 と 総インプラント (オールオン6など)の 違い

監修:オールオン4 ザイゴマクリニック

院長 歯学博士 大多和 徳人

わたしたちの歯は、さまざまな治療をしながら、長期間使用していきます。生まれた時から、学生時代、高齢者になるまでずっとです。その人生の過程で、歯を失う方は少なくないのが実際です。虫歯から1本の歯を失う方もいれば、歯周病で複数本の歯を失う方もいます。
失った歯の代わりに、欠損補綴歯(代わりとなる義歯)の治療が必要となります。インプラントやブリッジ、入れ歯などがそれにあたります。しかしながら、インプラントは費用がかかる、ブリッジは隣の歯を削る、入れ歯は使い心地がよくないと悩ましい点がそれぞれにあります。
患者さんの中には「仕事が忙しかった」「歯科医院が嫌だった」と歯を失った後の治療が進まないまま、全部の歯がボロボロ、ぐらぐらになってしまう方もいます。いざ全部の歯を治療をしたいと思った時にオールオン4や総インプラントの違いがわからず悩む方もいます。
本稿では、歯の全体的な治療で多く採用されている オールオン4 と 総インプラント の違いをご説明します。どちらの治療法がよいか悩んでいる方は、ぜひ最後までご覧ください。

固定式の欠損補綴治療

固定式の欠損補綴治療
図1:インプラントブリッジは固定式

歯を喪失した時に歯の代わりとなるような治療のことを「欠損補綴治療」と言います。欠損補綴治療は、ブリッジ・入れ歯・インプラントなどがあります。この内、固定式の欠損補綴治療は「ブリッジ」と「インプラント」となります。

しかしながら、無歯顎(歯が一本もない)の場合だと、インプラントだけで全体の歯を支えなくてはなりません。つまり、インプラントだけの固定式の欠損補綴治療(インプラントブリッジ)となります。この場合、以下の2種類となります。


・総インプラント(オールオンX、オールオン6)
・オールオン4

オールオン4 と総インプラント(オールオンX、オールオン6)は何が違うのでしょうか。機能や構造、考え方などで深堀していきましょう。

総インプラントの特徴と長所・短所

総インプラント
図2:総インプラントだと本数が多くなる

総インプラントの特徴

総インプラントとは、その名のとおり上顎もしくは下顎のすべての歯に対して、インプラントだけを用いて歯を再建する治療を指します。着脱が不要な固定式のインプラントブリッジとなります。


・2つ以上のインプラントブリッジ
・1つのフルインプラントブリッジ

この2種類はどちらも「従来法」と呼ばれ、多くの歯科医院にて施術されている治療法となります。

従来法の場合は多くの歯科医院にて施術されているため、今のかかりつけの歯科医院に事情があっていけなくなった場合でも、他の歯科医院にて修理やメンテナンスができる場合があります。インプラントを専門としている歯科医院であればシステム自体は共通しているのでどのメーカーでも難なく対応できます。

もう少し詳しく、2種類のインプラントブリッジを解説します。

 2つ以上のインプラントブリッジの特徴

総インプラント
図3:従来法の総インプラント

従来法で施術されるインプラントは1本の欠損歯に対し1本のインプラントにて機能を補います。また、2本以上の連続欠損歯に対しては複数本のインプラントブリッジにて機能を補います。

図3を見てみましょう。図は上の歯になりますが、総インプラントとなる場合は、長期間の治療の末になります。治療を開始してすぐにこの状態になるわけではなく、少しずつ治療を継続し、なくしてしまった歯にインプラントをして、結果、総インプラントになるイメージです。

したがって、橙色矢印で示すように、インプラントとインプラントの距離が近くなってしまう場合もあれば、インプラントのプラットフォーム(かぶせ物の土台)にばらつきができてしまう場合もあります。すると、せっかく噛めるようにはなったが、食事が歯に詰まるということもあります。

 1つのフルインプラントブリッジの特徴

オールオン6など
図4:オールオン6などの総インプラント

それでは、オールオン6やオールオンXとは何なのでしょうか。従来法のインプラントブリッジの応用のような治療となりますが、お口全体を1つのインプラントブリッジで治療します。つまり、ワンピース(一連)のインプラントブリッジとなります。これは術者にとって扱いが少し容易になります。

図4を見てみましょう。基本的には12~14本の歯がつながった一連の歯となります。2つ以上のインプラントブリッジと同様にインプラントのプラットフォームが隣のインプラントとずれる場合があります。従来法の流れでいくとどうしてもこのようなことはおきます。また、歯冠がすこし長くなっているのがわかりますか?このような特徴があります。

すべての歯列を6本のインプラントで支える場合はオールオン6。すべての歯列を、5本~X本のインプラントで支えるコンセプトをオールオンXといいます。それ以外の名称(※例:オールオン4Plus、オールオン7など)はあくまで呼称にしかすぎません。当院へのセカンドオピニオンが増えているので注意しましょう。

優良誤認とは

消費者庁 優良誤認とは より引用

総インプラントのメリット

つづいて、総インプラントの長所を3つご紹介します。

対応可能な歯科医院が多い

総インプラント治療はノーマルインプラント治療の応用となります。したがって、ノーマルインプラントを施術できる歯科医院では対応できる場合が多いです。

これまでの治療の延長線

口の中には保存すべき歯が普通は28本あります。部位によっては虫歯治療やかぶせ物の治療をしていることもあります。歯周病などで歯を抜かれた場合でもインプラントにて欠損補綴を行い、段階的に総インプラントにすることが可能です。

汎用性が高い

骨がある部分には通常のインプラント治療を行い、骨が足りない部分にはサイナスリフトやGBRといった骨造成治療を組み合わせることが可能です。しかしながら骨が全く足りない場合は治療が難しいこともあります。

総インプラントのデメリット

つづいて、総インプラントの短所を3つご紹介します。

症例が限られている

インプラント治療は必ず、「骨」が必要です。顎骨が足りない患者さんは骨造成治療で骨が足りない部分を補うことができますが、顎骨が全く足りない場合は治療は難しいです。骨造成治療は部位や条件によってうまくいかないことがあり、骨を再生することができないこともあります。

仕上がりにムラが出やすい

これまでの治療の延長線であり、10年や20年、それ以上の時間を経て総インプラントになる患者さんもいます。すると、それぞれのインプラントやインプラントブリッジに段差ができてしまうのが普通です。段差に食べ物が詰まることも。したがって、仕上がりにムラが出やすいことが考えられます。

費用と時間がかかりすぎる

骨がない部位には骨造成治療を行い、骨が出来上がるまで半年以上待機する必要があります。もしそれが全体に及ぶと、2年~3年かかることもあります。また、インプラントの本数が増えるためその分パーツも必要となり、総費用を考慮すると費用がかかりすぎていることも多くあります。

歯の資産価値の重要性

数字で見る 歯 の 資産価値 より引用

オールオン4 の特徴と長所・短所

オールオン4 のメリット
図5:オールオン4 は4本だけのインプラント

オールオン4 の特徴

オールオン4 とは、4本のインプラントだけで12本分の歯を支えるインプラントシステムのことです。「ALL」は12本分の歯と歯肉を意味し、「on 4」は4本のインプラントで支えることを意味します。

オールオン4 は、使用するインプラントにより以下の2種類が代表となります。


・オールオン4 ノーマル
・オールオン4 ザイゴマ

オールオン4 ノーマルは、上顎骨に骨が残っている患者さんや下顎のオールオン4が対象となります。オールオン4ザイゴマは、上顎骨が極度にやせていて、インプラントをするための顎骨を失っている患者さんが対象となります。上顎専用のオールオン4です。

もう少し、オールオン4ノーマルとオールオン4ザイゴマの特徴をご紹介しましょう。

 オールオン4ノーマルの特徴

オールオン4ノーマルの顎骨
図6:オールオン4 ノーマルはある程度骨が必要

オールオン4 ノーマルでは、ノーマルインプラント4本を使用します。ノーマルインプラントを固い骨がある箇所にしっかり埋入します。オールオン4はインプラントと上部構造がすべて一体となることで強度を出します。

オールオン4ノーマルは前歯から小臼歯部にかけて顎骨が必要となります。下顎の場合、大きな問題になることはないですが、上顎は違います。 図6橙色矢印で示すように上顎骨にある程度のボリュームが必要です。 総インプラントに比べると必要な顎骨量は減りますが、ある程度の骨は必要となります。

 オールオン4 ザイゴマの特徴

オールオン4ザイゴマの顎骨
図7:オールオン4ザイゴマは骨がなくてもできる

オールオン4ザイゴマでは、ザイゴマインプラントを使用します。ザイゴマインプラントとノーマルインプラントの組み合わせで合計4本で、オールオン4となります。ザイゴマインプラントはノーマルインプラントに比べて、かなりの強度がでるためとても安定します。

図7をみてみましょう。この方の場合、上顎骨にインプラント2本分だけボリュームがあるだけで、奥歯には骨がありません。この場合では、ノーマルインプラント2本、ザイゴマインプラントを2本使ったオールオン4 ザイゴマになります。患者さんの中には上顎骨が全くない方もいるため、ザイゴマインプラント4本だけでオールオン4を構成する場合もあります。その場合は、Extra Maxillo Zygomatic All-on-4 (EZ4)と呼ばれ、虫歯や歯周病から完全に開放されます。

オールオン4 のメリット

つづいて、オールオン4の長所を3つご紹介します。

1日で歯が入る

オールオン4は1日で全ての歯を治療します。その日のうちに歯が入るため、歯がない期間がない治療となります。その日から簡単な食事であれば食べられるようになりますし、口元の外見的な印象も損なわないです。

多くの症例に対応可能

インプラント治療は対応可能な症例は限られます。しかし、オールオン4は多くの症例で施術が可能となります。特に、現在のオールオン4にはザイゴマインプラントの進化があります。したがって、ほぼ全ての症例に対応することが可能になりました。

費用の抑制が可能

オールオン4はインプラントの性能を最大限に引き出します。これによりすべての歯の治療を4本だけで可能とします。骨造成治療や不必要なパーツがなくなり治療費を抑制することが可能となります。

オールオン4 のデメリット

専門医が少ない

オールオンフォーの手技やその術式はかなり奥が深いです。インプラント、埋入方向、角度調整など様々な知識や技術が必要となり、伝統工芸の職人の技などに近いと思います。オールオン4を専門とする歯科医師は限りなく少ないです。すべての歯を支えるために必要なインプラントは4本で十分なのです。

費用が高くなる場合もある

患者さんの中には骨があまりにも少なくて、ザイゴマインプラントでしか治療できない場合も多々あります。ザイゴマインプラントは別途費用が発生するため、ザイゴマインプラント4本のオールオン4となると治療費が高くなる場合もあります。

抜歯の必要性(信頼関係が必須)

オールオン4 は全ての歯の抜歯が必要です。そのまま当日に美しい仮歯を装着し、3ヶ月後には歯の形や色までこだわった本歯を手に入れることが可能です。しかし、すべての歯を抜く必要性があるため、その後の治療のことも含めて、歯科医師と患者さんの間に信頼関係が必要だと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。今回は「オールオン4 と 総インプラント (オールオン6など)の 違い」をテーマに記事を書きました。歯の深刻な悩みをお持ちの方に向けて記事を書いていますが、疑問は解決しましたでしょうか? 皆様のインプラントに関する不安を少しでも軽減できる情報を提供できればと考えています。

本ブログは「双方向」であることをモットーとしています。本ブログ読者からのインプラント、All-on-4、ザイゴマインプラントに関するフィードバックやご質問に、できる限り筆者が記事を書いたり、個別返答でお悩みにお答えすることができます。
※本ブログはインプラント・ザイゴマインプラント専門のブログとなりますのでご了承ください。

著者紹介

大多和 徳人

おおたわ歯科医院

オールオン4 ザイゴマクリニック

院長 歯学博士
専門分野

重度歯周病 / ザイゴマインプラント

学歴・職歴

  • 九州大学歯学部歯学科卒業
  • 九州大学大学院顔面口腔外科卒
  • 九州大学病院デンタルマキシロフェイシャルセンター勤務
  • 大分岡病院顎顔面外科マキシロフェイシャルユニット勤務
  • All-on-4 ザイゴマクリニック開設

所属学会

  • 日本口腔外科学会所属 認定医
  • 顎顔面インプラント学会所属
  • ICOI(国際インプラント学会)所属 認定医
  • All-on-4 ザイゴマインプラント協会 理事
  • Study Group of the Edentulous Solutions 理事

専門

  • All-on-4 ザイゴマインプラント専門医
  • 九州大学総長賞受賞
    (テーマ: 3Dプリンターによる三次元骨再生)
  • 博士号取得
    (テーマ: カスタムメードチタンメッシュでの骨再生)
  • 国際特許取得
    (主題: All-on-4 のための三次元スキャンボディの開発)

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